あきらめアネゴ
諦らめアネゴ

冒頭文

岡本綺堂「相馬の金さん」僕はこの有名な舞台を見たことがなく、読んだのだけれども、一場面が記憶に残つてゐる。芝居の一番終りのところで、金さんが上野の戦争に参加して刀をふりまはしたけれども一向に効なく敗戦、金さんは山から逃げだしてくる。金さんの恋人に常盤津だか何かの師匠があつて、金さんの身の上を心配して戦場の近くまで探しにくると、落ちてくる金さんとバッタリ出会つた。金さんは深傷(ふかで)で逃げ延ること

文字遣い

新字旧仮名

初出

「現代文学 第六巻第一〇号」大観堂、1943(昭和18)年9月28日

底本

  • 坂口安吾全集 03
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年3月20日