ぶんがくとこくみんせいかつ |
文学と国民生活 |
冒頭文
パヂェスの「日本切支丹(キリシタン)宗門史」だとか「鮮血遺書」のやうなものを読んでゐると、切支丹の夥しい殉教に感動せざるを得ないけれども、又、他面に、何か濁つたものを感じ、反撥を覚えずにゐられなくなるのである。 当時は切支丹の殉教の心得に関する印刷物があつたさうで、切支丹達はそれを熟読して死に方を勉強してゐた。潜入の神父とか指導者達はまるで信徒の殉教を煽動してゐるやうな異常なヒステリイに
文字遣い
新字旧仮名
初出
「現代文学 第五巻第一二号」大観堂、1942(昭和17)年11月28日
底本
- 坂口安吾全集 03
- 筑摩書房
- 1999(平成11)年3月20日