しとはなうた
死と鼻唄

冒頭文

戦争の目的とか意義とか、もとより戦争の中心となる題目はそれであつても、国民一般といふものが、個人として戦争とつながる最大関心事はたゞ「死」といふこの恐るべき平凡な一字に尽きるに相違ない。 僕は昔こんなことを考へてゐた。パリジャンは戦争もルーレットも同じやうに考へて鼻唄で弾をこめる。だから、戦争に強いであらう。然し、ヤンキーは、戦争もラグビーもてんで見境がない。奴等はことお祭騒ぎでありさへ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「現代文学 第四巻第三号」大観堂、1941(昭和16)年4月28日

底本

  • 坂口安吾全集 03
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年3月20日