ぬすまれたてがみのはなし |
| 盗まれた手紙の話 |
冒頭文
あの人間は気違だから精神病院へぶちこめなんて、とんでもない。神様は人間をお裁きになるけれども、神様が神様をお裁きになつたり、あの神様は気違だから精神病院へぶちこめなどと仰有(おっしゃ)ることはなかつたのである。 一 ある朝、兜町のさる仲買店の店先へドサリと投げこまれた郵便物の山の中で、ひときは毛色の変つた一通があつた。たいへん分厚だ。けれども証券類や印刷物とは関係のない様子に見える。 ペ
文字遣い
新字旧仮名
初出
「文化評論 第一巻第一号」甲鳥書林、1940(昭和15)年6月1日
底本
- 坂口安吾全集 03
- 筑摩書房
- 1999(平成11)年3月20日