いのちびろいをしたはなし
生命拾ひをした話

冒頭文

朝日新聞の八段位獲得戦木谷七段対久保松六段の対局で呉七段の解説。参考図一で黒が手を抜いて「い」と打たれても生きがあるといふのである。即ち参考図二白七までゞ目を欠きにきても、次に黒ろと打つ手筋によつて黒に渡りがあるといふ。 娯楽機関の何一つない田舎では、新聞を読むのが最大の娯楽である。僕はラヂオを聴かないが、毎日ラヂオを読むのである。活動写真も音楽も読むのである。料理も薬も読む。

文字遣い

新字旧仮名

初出

「囲碁春秋 第四巻第一号」1940(昭和15)年1月1日

底本

  • 坂口安吾全集 03
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年3月20日