そうりだいじんがもらったてがみのはなし
総理大臣が貰つた手紙の話

冒頭文

一 いつの頃だか知らないが、或る日総理大臣官邸へ書留の手紙がとどいた。大変分厚だ。危険と書いた道路の建札と同じぐらゐ大きな書体で、親展と朱肉で捺してあるのである。けれども、なんにも役に立たない。 かういふ手紙を読むために一役ありついた役人がゐて、つまらなさうな顔をしながら毎日手紙を読んでゐる。この役人が開いてみると、ザッと次のやうな大意のことが書いてあつた。       二

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文学者 第一巻第一一号」文学者発行所、1939(昭和14)年11月1日

底本

  • 坂口安吾全集 03
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年3月20日