にほんのやまとぶんがく |
日本の山と文学 |
冒頭文
(一) 山の観念の変移 我々の祖先達は里から里へ通ふために、谷を渉り、峠を越えはしたものの、今日我々が行ふやうな登山を試みる者はなかつた。 支那の画家、文人等には山から山を遍歴し石涛(せきとう)のやうに山中の仙といふやうな生活ぶりの人達が相当居たといふことであるが、我々の祖先達にも山中歴日無しといふやうな支那の詩句が愛好され、山中に庵を結ぶといふやうな境地を愛した人は多いが、今日高
文字遣い
新字旧仮名
初出
「信濃毎日新聞 第二〇五七五号~二〇五七八号」1939(昭和14)年8月16日~19日
底本
- 坂口安吾全集 03
- 筑摩書房
- 1999(平成11)年3月20日