しせいかんだん
市井閑談

冒頭文

(一) やまさん 昔銀座裏に「千代梅」といふおでん屋があつたころ、あそこは奇妙な人物が出入して不思議なところであつたが、桃中軒雲右衛門の妻君といふ婆さんなどと一緒に「やまさん」といふ二十二三の優男が居候してゐた。 「やまさん」は左団次の弟子で女形だつたさうだ。それであそこへ出入する芸者達がおやまの「やまさん」で、さう称んでゐたのである。時々「たいこもち」に出掛けたりした。 「やまさん

文字遣い

新字旧仮名

初出

「都新聞 第一八五〇三号~一八五〇五号」1939(昭和14)年5月6日~8日

底本

  • 坂口安吾全集 03
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年3月20日