ちょうへんしょうせつじひょう |
長篇小説時評 |
冒頭文
(一) 農民小説の人間性 短篇小説は長篇小説の圧縮されたものだといふ考へ方をしてゐた人があつたやうだ。さういふ事は有り得ないことで、短い枚数で書きうる事柄であつたから短篇となり、長大な枚数でなければ書き得ない事柄であつたために長篇となるだけのことであらう。然しながら、短篇的な思考の型になれてみると、思考自体が長篇的になりにくくなる。長篇小説が流行しだしてから、まだ一年ぐらゐにしかならないのに
文字遣い
新字旧仮名
初出
「徳島毎日新聞 第一三五七五号、第一三五七九号~第一三五八一号」1939(昭和14)年3月25日、29日~31日
底本
- 坂口安吾全集 03
- 筑摩書房
- 1999(平成11)年3月20日