かげろうだんぎ ――ひしやましゅうぞうへ――
かげろふ談義 ――菱山修三へ――

冒頭文

二ヶ月ばかりお目にかかりませんが、御元気のことは、時々人づてにきいてゐました。さて、僕は今日、人々は笑ふばかりで、とりあつてくれさうもないことに就いてお喋りしたくなりましたので、君にあてて話しかける必要にせまられました。 東路の道のはてよりも、なほ奥つかたに生ひ出でたる人、いかばかりかはあやしかりけむを、いかに思ひ始(そ)めけることにか、世の中に物語といふもののあんなるを、いかで見ばやと

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文体 第二巻第一号」スタイル社、1939(昭和14)年1月1日

底本

  • 坂口安吾全集 03
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年3月20日