ぶんしょうのいちけいしき
文章の一形式

冒頭文

私は文章を書いてゐて、断定的な言ひ方をするのが甚だ気がかりの場合が多い。心理の説明なぞの場合が殊に然うで、断定的に言ひきつてしまふと、忽ち真実を掴み損ねたやうな疑ひに落ちこんでしまふ。そこで私は、彼はかう考へた、と書くかはりに、かう考へたやうであつた、とか、かう考へたらしいと言ふ風に書くのである。つまり読者と協力して、共々言外のところに新らたな意味を感じ当てたいといふ考へであるが、これは未熟を弥縫

文字遣い

新字旧仮名

初出

「作品 第六巻第九号」1935(昭和10)年9月1日

底本

  • 坂口安吾全集 01
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年5月20日