きんだんにからまるしてきようそのしんぴせいについて
金談にからまる詩的要素の神秘性に就て

冒頭文

一の巻 椋原(むくはら)孔明とよぶ尊厳な弁護士があつた。とある屋根裏に棲んでゐたといふのであるが、東京には欧羅巴(ヨーロッパ)の安宿なみの屋根裏なんぞ見当らないといきりたつ性質のよろしくない読者のためには、BON! それでは地下室に棲んでゐたと言ひかへてみても一向私の差支えはないのであつて、要するに尊厳なる弁護士事務所といふものは普通地下室や屋根裏の中にある筈がない——ところが尊厳なる弁護士

文字遣い

新字旧仮名

初出

「作品 第六巻第七号」1935(昭和10)年7月1日

底本

  • 坂口安吾全集 01
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年5月20日