いよくてきそうさくぶんしょうのけいしきとほうほう
意慾的創作文章の形式と方法

冒頭文

一 小説の文章を他の文章から区別する特徴は、小説のもつ独特の文章ではない。なぜなら小説に独特な文章といふものは存在しないからである。 「雨が降つた」ことを「雨が降つた」と表はすことは我々の日常の言葉も小説も同じことで、「悲しい雨が降つた」なぞといふことが小説の文章ではない。 勿論雨が「激しく」降つたとか「ポツポツ」降つたとか言はなければならない時もある。併(しか)し小説の場合

文字遣い

新字旧仮名

初出

「日本現代文章講座 Ⅱ―方法篇」厚生閣、1934(昭和9)年10月13日

底本

  • 坂口安吾全集 01
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年5月20日