ながしまのし
長島の死

冒頭文

長島に就て書いてみたところが、忽ち百枚を書いたけれども、重要なことが沢山ぬけてゐるやうな気がして止してしまつた。長島は私の精神史の中では極めて特異な重大な役割を持つてゐるので、私の生きる限りは私の中に亡びることがないのである。従而(したがって)、今あわただしく長島の全てに就て書き尽すまでもなく、これからの生涯に私の書くところの所々に於て、陰となり流れとなつて書き尽されずには有り得ないであらう。今は

文字遣い

新字旧仮名

初出

「紀元 第二巻第二号」1934(昭和9)年2月1日

底本

  • 坂口安吾全集 01
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年5月20日