ドストエフスキーとバルザック
ドストエフスキーとバルザック

冒頭文

散文に二種あると考へてゐるが、一を小説、他を作文とかりに言つておく。 小説としての散文の上手下手は、所謂文章——名文悪文と俗に言はれるあのこととは凡そ関係がない。所謂名文と呼ばれるものは、右と書くべき場合に、言葉の調子で左と書いたりすることの多いもので、これでは小説にならない。漢文日本には此の弊が多い。 小説としての散文は、人間観察の方法、態度、深浅等に由つて文章が決定づけられ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「行動 第一巻第二号」紀伊国屋出版部、1933(昭和8)年11月1日

底本

  • 坂口安吾全集 01
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年5月20日