ごうまんなめ
傲慢な眼

冒頭文

(一) ある辺鄙な県庁所在地へ、極めて都会的な精神的若さを持つた県知事が赴任してきた。万事が派手であつたので、町の人々を吃驚(びっくり)させたが、間もなく夏休みが来て、東京の学校へ置き残した美くしい一人娘が此の町へ来ると、人々は初めて県知事の偉さを納得した。 一夕町に祭礼があつて、令嬢は夜宮の賑ひを見物に出掛けた。祭の灯に薄ら赤く照らされた雑踏の中で、自分に注がれた多くの眼が令嬢を

文字遣い

新字旧仮名

初出

「都新聞 第16212号~第16213号」1933(昭和8)年1月8日~1月9日

底本

  • 坂口安吾全集 01
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年5月20日