よこくさつじんじけん |
| 予告殺人事件 |
冒頭文
敵は中小都市の予告爆撃というものをやりだしたが、これはつまり予告殺人事件と同じ性質のものだと思われる。予告殺人事件といえば概して復讐などの場合、ただ殺しては面白くないというので予告を与え、恐怖混乱せしめ苦痛を多くして満足しようという悪質残忍なものである。 尤も、予告することによって真の犯罪意図をくらまそうとするのも予告殺人に於ける一つの型で、真の意図は予告せざるところにある。つまり県市を
文字遣い
新字新仮名
初出
「東京新聞」1945（昭和20）年8月12日
底本
- 坂口安吾選集 第十巻エッセイ1
- 講談社
- 1982（昭和57）年8月12日