ひがんについて ――「ぶんげい」のさくひんひひょうにかんれんして――
悲願に就て ――「文芸」の作品批評に関聯して――

冒頭文

「文芸」二月号所載、アンドレ・ジイドの「一つの宣言」は興味深い読物であった。ドストエフスキーが、又偉大なる作家達が全てそうであったように、習慣的な人間観に抗して、人間の絶えざる再発見に努めてきたジイドは、ソヴエート聯邦に於て制度が人々を解放したばかりでなく、とうとう人間そのものを革めつつある事実に直面して、人間の発見もしくは改革が個人的な懊悩や争闘から獲られるばかりでなく、制度の変革からも獲られる

文字遣い

新字新仮名

初出

「作品」1935(昭和10)年3月

底本

  • 坂口安吾選集 第十巻エッセイ1
  • 講談社
  • 1982(昭和57)年8月12日