おやがすてられるせそう
親が捨てられる世相

冒頭文

戦争中はほかに楽しみもなかったので、私はよく碁会所のお世話になった。 若い人は戦争に行ってるから、常連の多くは年配の人であったが、後日に至って「すてられる親たち」の様相はそのころから私の目につくようになった。彼らの多くは、かなり教養の高い人でも、概ねステバチになっていた。働かざるもの食うべからず、ゴクツブシ、というような思想が——思想よりも強力な制度が、たとえば配給量という当時の最も切実なもの

文字遣い

新字新仮名

初出

「週刊朝日 春季増刊号」1952(昭和27)年3月24日

底本

  • 坂口安吾選集 第十一巻エッセイ2
  • 講談社
  • 1982(昭和57)年9月12日