にじゅういち
二十一

冒頭文

そのころ二十一であった。僕は坊主になるつもりで、睡眠は一日に四時間ときめ、十時にねて、午前二時には必ず起きて、ねむたい時は井戸端で水をかぶった。冬でもかぶり、忽ち発熱三十九度、馬鹿らしい話だが、大マジメで、ネジ鉢巻甲斐々々しく、熱にうなり、パーリ語の三帰文というものを唱え、読書に先立って先ず精神統一をはかるという次第である。之は今でも覚えているが、ナモータツサバガバトオ、アリハトオ、サムマーサーブ

文字遣い

新字新仮名

初出

「現代文学 第六巻第九号」1943(昭和18)年8月28日

底本

  • 坂口安吾選集 第六巻 小説6
  • 講談社
  • 1982(昭和57)年4月12日