ピエロでんどうしゃ
ピエロ伝道者

冒頭文

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。 屋根の上で、竹竿を振り廻す男がいる。みんなゲラゲラ笑ってそれを眺めている。子供達まで、あいつは気違いだね、などと言う。僕も思う。これは笑わない奴の方が、よっぽどどうかしている、と。そして我々は、痛快に彼と竹竿を、笑殺しようではないか! しかし君の心は言いはしないか? 竹竿を振り廻しても所詮はとどかないのだか

文字遣い

新字新仮名

初出

「青い馬 創刊号」岩波書店、1931(昭和6)年5月1日

底本

  • 坂口安吾選集 第一巻小説1
  • 講談社
  • 1982(昭和57)年7月12日