木剣試合 1 文政×年の初夏のことであった。 杉浪之助(すぎなみのすけ)は宿を出て、両国をさして歩いて行った。 本郷の台まで来たときである。榊原式部少輔(さかきばらしきぶしょうゆう)様のお屋敷があり、お長屋が軒を並べていた。 と、 「エーイ」 「イヤー」 という、鋭い掛声が聞こえてきた。 (はてな?) と、浪之助は足を止めた。