けんきょう
剣侠

冒頭文

木剣試合 1 文政×年の初夏のことであった。 杉浪之助(すぎなみのすけ)は宿を出て、両国をさして歩いて行った。 本郷の台まで来たときである。榊原式部少輔(さかきばらしきぶしょうゆう)様のお屋敷があり、お長屋が軒を並べていた。 と、 「エーイ」 「イヤー」 という、鋭い掛声が聞こえてきた。 (はてな?) と、浪之助は足を止めた。

文字遣い

新字新仮名

初出

「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日

底本

  • 国枝史郎伝奇全集 巻四
  • 未知谷
  • 1993(平成5)年5月20日