ぶんがくのふるさと
文学のふるさと

冒頭文

シャルル・ペロオの童話に「赤頭巾(あかずきん)」という名高い話があります。既に御存じとは思いますが、荒筋を申上げますと、赤い頭巾をかぶっているので赤頭巾と呼ばれていた可愛(かわい)い少女が、いつものように森のお婆(ばあ)さんを訪ねて行くと、狼(おおかみ)がお婆さんに化けていて、赤頭巾をムシャムシャ食べてしまった、という話であります。まったく、ただ、それだけの話であります。 童話というもの

文字遣い

新字新仮名

初出

「現代文學」1941(昭和16)年7月

底本

  • 堕落論
  • 新潮社
  • 2000(平成12)年6月1日