こんごのじいんせいかつにたいするしこう
今後の寺院生活に対する私考

冒頭文

寺院に特殊な生活があるとすれば禁欲生活より外にはないと思われます。しかし一般人間に即した生活即(すなわ)ち情欲や物欲に即した生活のあることを忘れる訳には行きません。寺院の人々は禁欲生活を過重し勝ちでとかく所謂(いわゆる)煩悩(ぼんのう)に即した生活の中にも道徳律や悟脱の力のあることを忘れている様です。禁欲生活が道徳的に勝(すぐ)れている理由もなく、又特に早く悟れる理由もありません。生活はその人の信

文字遣い

新字新仮名

初出

「涅槃」1927(昭和2)年3月

底本

  • 堕落論
  • 新潮社
  • 2000(平成12)年6月1日