めいじんじごく
名人地獄

冒頭文

消えた提灯(ちょうちん)、女の悲鳴 「……雪の夜半(よわ)、雪の夜半……どうも上(かみ)の句が出ないわい」 寮のあるじはつぶやいた。今、パッチリ好(よ)い石を置いて、ちょっと余裕が出来たのであった。 「まずゆっくりお考えなされ。そこで愚老は雪一見」 立ち上がったあるじは障子を開けて、縁の方へ出て行った。 「降ったる雪かな、降りも降ったり、ざっと三寸は積もったかな。……今年

文字遣い

新字新仮名

初出

「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日

底本

  • 名人地獄
  • 国枝史郎伝奇文庫(七)、講談社
  • 1976(昭和51)年5月20日