たいしゅうのちえ
大衆の知恵

冒頭文

私はこの雑誌の五号で「カットの文法」という文章を書いたが、あの中で私は次のように書いた。カットをつなぐのは、ほんとうは、観衆なのである。観衆が、あの場面と場面をどんなこころで、つないで見るかを頭に置いて、シナリオ・ライターも、監督も、フィルムをつないでいくのである。 フィルムには「である」「でない」の言葉がカットとカットの間にないから、小説家が勝手に書くように簡単にいかないのである。

文字遣い

新字新仮名

初出

「シナリオ」1951(昭和26)年9月号

底本

  • 中井正一全集 第三巻 現代芸術の空間
  • 美術出版社
  • 1981(昭和56)年5月25日