ぎんさんじゅうまい
銀三十枚

冒頭文

1 「おいおいマリア、どうしたものだ。そう嫌うにもあたるまい。まんざらの男振りでもない意(つもり)だ。いう事を聞きな、いう事を聞きな」 ユダはこう云って抱き介(かか)えようとした。 猶太(ユダヤ)第一美貌の娼婦、マグダラのマリアは鼻で笑った。 「ふん、なんだい、金もない癖に。持っておいでよ、銀三十枚……」 「え、なんだって? 三十枚だって? そんなにお前は高いのか」 「

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」1926(大正15)年3月~5月

底本

  • 国枝史郎伝奇全集 巻六
  • 未知谷
  • 1993(平成5)年9月30日