かたきうちきょうだいがさ
仇討姉妹笠

冒頭文

袖の中には? 舞台には季節にふさわしい、夜桜の景がかざられてあった。 奥に深々と見えているのは、祗園辺りの社殿(やしろ)であろう、朱の鳥居や春日燈籠などが、書割の花の間に見え隠れしていた。 上から下げられてある桜の釣花の、紙細工の花弁が枝からもげて、時々舞台へ散ってくるのも、なかなか風情のある眺望(ながめ)であった。 濃化粧の顔、高島田、金糸銀糸で刺繍(ぬいとり

文字遣い

新字新仮名

初出

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

底本

  • 国枝史郎伝奇全集 巻六
  • 未知谷
  • 1993(平成5)年9月30日