りゅうえいひろくかつえぐら
柳営秘録かつえ蔵

冒頭文

1 天保元年正月五日、場所は浅草、日は午後(ひるさがり)、人の出盛る時刻であった。大道手品師の鬼小僧、傴僂(せむし)で片眼で無類の醜男(ぶおとこ)、一見すると五十歳ぐらい、その実年は二十歳(はたち)なのであった。 「浅草名物鬼小僧の手品、さあさあ遠慮なく見て行ってくれ。口を開いて見るは大馬鹿者、ゲラゲラ笑うはなお間抜け、渋面つくるは厭な奴、ちんと穏しく見る人にはこっちから褒美を出してや

文字遣い

新字新仮名

初出

「国民新聞」1926(大正15)年1月5日~15日

底本

  • 国枝史郎伝奇全集 巻五
  • 未知谷
  • 1993(平成5)年7月20日