おおとりものせんにんつぼ
大捕物仙人壺

冒頭文

1 女軽業の大一座が、高島の城下へ小屋掛けをした。 慶応末年の夏の初であった。 別荘の門をフラリと出ると、伊太郎(いたろう)は其方(そっち)へ足を向けた。 「いらはいいらはい! 始まり始まり!」と、木戸番の爺(おやじ)が招いていた。 「面白そうだな。入って見よう」 それで伊太郎は木戸を潜った。 今、舞台では一人の娘が、派手やかな友禅の振袖姿で、一本

文字遣い

新字新仮名

初出

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

底本

  • 国枝史郎伝奇全集 巻一
  • 未知谷
  • 1992(平成4)年11月20日