こうはくちりめんぐみ
紅白縮緬組

冒頭文

一 「元禄の政(まつりごと)は延喜に勝れり」と、北村季吟は書いているが、いかにも表面から見る時は、文物典章燦然と輝き、まさに文化の極地ではあったが、しかし一度裏へはいって見ると、案外諸所に暗黒面があって、蛆(うじ)の湧いているようなところがある。 南町奉行配下の与力鹿間紋十郎と云う人物が、ある夜同心を二人連れて、市中をこっそり見廻っていた。 丑満(うしみつ)時であったから、将軍お

文字遣い

新字新仮名

初出

「サンデー毎日 夏季増刊号」1924(大正13)年7月1日

底本

  • 銅銭会事変 短編
  • 国枝史郎伝奇文庫27、講談社
  • 1976(昭和51)年10月28日