おおとりのゆくえ
大鵬のゆくえ

冒頭文

吉備彦来訪 読者諸君よ、しばらくの間、過去の事件について語らしめよ。……などと気障(きざ)な前置きをするのも実は必要があるからである。 一人の貧弱(みすぼらし)い老人が信輔(のぶすけ)の邸を訪ずれた。 平安朝時代のことである。 当時藤原信輔といえば土佐の名手として世に名高く殊には堂々たるお公卿様。容易なことでは逢うことさえ出来ない。 「そんな貧弱(みすぼら

文字遣い

新字新仮名

初出

「サンデー毎日」1925(大正14)年1月11日

底本

  • 銅銭会事変 短編
  • 国枝史郎伝奇文庫27、講談社
  • 1976(昭和51)年10月28日