あかごうしくろうえもん
赤格子九郎右衛門

冒頭文

一 江川太郎左衛門、名は英竜、号は坦庵、字は九淵世々韮山の代官であって、高島秋帆の門に入り火術の蘊奥を極わめた英傑、和漢洋の学に秀で、多くの門弟を取り立てたが、中に二人の弟子が有って出藍の誉を謳われた。即ち、一人は川路聖謨、もう一人は佐久間象山であった。象山の弟子に吉田松陰があり、松陰の弟子には伊藤、井上、所謂維新の元勲がある。 所で江川太郎左衛門には一人の異色ある弟子があった。そ

文字遣い

新字新仮名

初出

「中学世界」1924(大正13)年6月

底本

  • 妖異全集
  • 桃源社
  • 1975(昭和50)年9月25日