ほくさいとゆうれい |
北斎と幽霊 |
冒頭文
一 文化年中のことであった。 朝鮮の使節が来朝した。 家斉(いえなり)将軍の思(おぼ)し召しによって当代の名家に屏風を描かせ朝鮮王に贈ることになった。 柳営絵所(えどころ)預りは法眼狩野融川(かのうゆうせん)であったが、命に応じて屋敷に籠もり近江八景を揮毫(きごう)した。大事の仕事であったので、弟子達にも手伝わせず素描から設色まで融川一人で腕を揮(ふる)った。樹
文字遣い
新字新仮名
初出
「サンデー毎日」1925(大正14)年1月1日
底本
- 怪しの館 短編
- 国枝史郎伝奇文庫28、講談社
- 1976(昭和51)年11月12日