いぬがみむすめ
犬神娘

冒頭文

一 安政五年九月十日の、午(うま)の刻のことでございますが、老女村岡様にご案内され、新関白近衛(このえ)様の裏門から、ご上人(しょうにん)様がご発足なされました際にも、私はお附き添いしておりました。(と、洛東清水寺成就院(じょうじゅいん)の住職、勤王僧月照(げっしょう)の忠実の使僕(しもべ)、大槻(おおつき)重助は物語った)さて裏門から出て見ますると、その門際(もんぎわ)に顔見知りの、西郷吉

文字遣い

新字新仮名

初出

「講談倶楽部」1935(昭和10)年9月増刊

底本

  • 怪しの館 短編
  • 国枝史郎伝奇文庫28、講談社
  • 1976(昭和51)年11月12日