しんれいさつじんじけん
心霊殺人事件

冒頭文

伊勢崎九太夫はある日二人の麗人から奇妙な依頼をうけた。心霊術の実験に立ち会ってインチキを見破ってくれというのだ。九太夫はいまは旅館の主人だが、もとは奇術師で名の知れた名手であった。奇術師の目から見れば心霊術なぞは幼稚きわまる手品で、暗闇でやるから素人をだましうる程度のタネと仕掛だらけの詐術にすぎないのである。熱海の旅館なぞでもこの心霊術師をよんで実験会をやるのが一時流行したこともあったので、九太夫

文字遣い

新字新仮名

初出

「別冊小説新潮 第八巻第一四号(創作二十二人集)」1954(昭和29)年10月15日

底本

  • 坂口安吾全集 15
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年10月20日