めいじかいか あんごとりもの 21 そのにじゅう トンビおとこ |
明治開化 安吾捕物 21 その二十 トンビ男 |
冒頭文
楠巡査はその日非番であった。浅草奥山の見世物でもひやかしてみようかと思ったが、それもなんとなく心が進まない。言問(こととい)から渡しに乗って向島へ渡り、ドテをぶらぶら歩いていると、杭にひっかかっている物がある。一応通りすぎたが、なんとなく気にかかって、半町ほど歩いてから戻ってきてそれを拾い上げた。 油紙で包んで白糸で結ばれている。白糸はかなり太くて丈夫な糸だが、タコをあげる糸らしい。相当
文字遣い
新字新仮名
初出
「小説新潮 第六巻第一〇号」1952(昭和27)年8月1日
底本
- 坂口安吾全集 10
- 筑摩書房
- 1998(平成10)年11月20日