めいじかいか あんごとりもの 17 そのじゅうろく かぞくはろくにん・めひとツはん
明治開化 安吾捕物 17 その十六 家族は六人・目一ツ半

冒頭文

「ねえ、旦那。足利にゃア、ロクなアンマがいないでしょう。私ゃ足利のアンマになってもいいんですがね。連れてッてくれねえかなア。足利の師匠のウチへ住み込みでも結構でさア。どうも、東京を食いつめちゃったよ」 足利の織物商人仁助の肩をもみながら、アンマの弁内が卑しそうな声で云う。 めッぽう力の強いアンマで、並のアンマを受けつけない仁助の肩の凝りがこのメクラの馬力にかかると気持よくほぐれる。

文字遣い

新字新仮名

初出

「小説新潮 第六巻第五号」1952(昭和27)年4月1日

底本

  • 坂口安吾全集 10
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年11月20日