めいじかいか あんごとりもの 16 そのじゅうご あかわな
明治開化 安吾捕物 16 その十五 赤罠

冒頭文

年が改って一月の十三日。松飾りも取払われて、街には正月気分が見られなくなったが、ここ市川の田舎道を着かざった人々の群が三々五々つづいて通る。一見して東京も下町のそれと分る風俗。芸者風の粋な女姿も少からずまじっている。 深川は木場の旦那の数ある中でも音にきこえた大旦那山キの市川別荘へ葬式に参列する人々であったが、それにしては喪服姿が目につかなくて、女姿は遊山(ゆさん)のようになまめかしいば

文字遣い

新字新仮名

初出

「小説新潮 第六巻第四号」1952(昭和27)年3月1日

底本

  • 坂口安吾全集 10
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年11月20日