めいじかいか あんごとりもの 14 そのじゅうさん まぼろしのとう |
明治開化 安吾捕物 14 その十三 幻の塔 |
冒頭文
「なア、ベク助。貴公、小野の小町の弟に当る朝臣(あそん)だなア。人に肌を見せたことがないそうだなア。ハッハッハア」 五忘にこう云われて、ベク助は苦い顔をした。イヤなことを云う奴だ。この寺へ奉公して足かけ四年になるが、五忘の奴がこう云いはじめたのは今年の夏からのことである。そのときは、 「貴公、めっぽう汗ッかきだが、肌をぬがねえのがフシギだなア」 「ヘッヘ。お寺勤めの心掛けでござんしょ
文字遣い
新字新仮名
初出
「小説新潮 第五巻第一五号」1951(昭和26)年12月1日
底本
- 坂口安吾全集 10
- 筑摩書房
- 1998(平成10)年11月20日