めいじかいか あんごとりもの 13 そのじゅうに ぐよう
明治開化 安吾捕物 13 その十二 愚妖

冒頭文

近ごろは誰かが鉄道自殺をしたときくと、エ? 生活反応はあったか? デンスケ君でも忽ちこう疑いを起すから、ウカツに鉄道自殺と見せかけても見破られる危険が多い。けれども明治の昔にこの手を用いて、誰に疑われもしなかったという悪賢い悪漢がいたかも知れない。法医学だの鑑識科学が発達していないから、真相を鑑定することができないのである。指紋が警察に採用されたのが明治四十五年のことだ。 ところが犯人にして

文字遣い

新字新仮名

初出

「小説新潮 第五巻第一三号」1951(昭和26)年10月1日

底本

  • 坂口安吾全集 10
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年11月20日