めいじかいか あんごとりもの 10 そのく ふくめんやしき
明治開化 安吾捕物 10 その九 覆面屋敷

冒頭文

光子は一枝の言葉が頭にからみついて放れなかった。 「ちょっとでよいから、のぞかせてよ。風守さまのお部屋を」 「ダメ。お部屋どころか、別館の近くへ立寄ってもいけないのよ」 すると一枝はあざわらって、 「そうでしょうよ。牢屋ですもの。しかも……」 一度言葉をきって、益々意地わるく薄笑いしながら、 「風守さまは御病気ではないのでしょう。気が違ってらッしゃるなんてウソなんだ

文字遣い

新字新仮名

初出

「小説新潮 第五巻第九号」1951(昭和26)年7月1日

底本

  • 坂口安吾全集 10
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年11月20日