めいじかいか あんごとりもの 09 そのはち とけいかんのひみつ
明治開化 安吾捕物 09 その八 時計館の秘密

冒頭文

生れつき大そう間のわるい人間というものがいるものだ。梶原正二郎という若い御家人がそれだった。そのとき彼は二十二だ。親父が死んで野辺の送りをすませたという晩に、 「今晩は。たのもう。どうれ」 両方分の挨拶にオマケをつけて大声で喚きながらドヤドヤと訪れた七八人。案内もまたず奥へあがりこんで、 「ホトケに線香あげにきたが、ホトケはどこだ、どこだ」 ホトケと隠れん坊しているよう。仏

文字遣い

新字新仮名

初出

「小説新潮 第五巻第八号」1951(昭和26)年6月1日

底本

  • 坂口安吾全集 10
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年11月20日