めいじかいか あんごとりもの 08 そのしち いしのした
明治開化 安吾捕物 08 その七 石の下

冒頭文

「私は六段格で。ヘッヘ」 と、甚八はさッさと白をとった。神田の甚八といえば江戸名題(なだい)の賭碁のアンチャン。本職は大工だが、碁石を握ると素人無敵、本因坊にも二目なら絶対、先なら打ち分けぐらいでしょうなとウヌボレのいたって強い男。川越くんだりへ来て、手を隠すことはない。 武州川越在の千頭(せんどう)津右衛門といえば、碁打の間には全国的に名の知れた打ち手。名人上手に先二なら歩(ぶ)

文字遣い

新字新仮名

初出

「小説新潮 第五巻第五号」1951(昭和26)年4月1日

底本

  • 坂口安吾全集 10
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年11月20日