めいじかいか あんごとりもの 07 そのろく ちをみるしんじゅ
明治開化 安吾捕物 07 その六 血を見る真珠

冒頭文

明治十六年一月のことである。東京の木工船会社で新造した百八十トンの機帆船昇龍丸が試運転をかねて濠洲に初航海した。日本の国名も聞きなれぬ当時のことで、非常に珍しがられて、港々に盛大なモテナシをうけた。そのとき、木曜島近海の暗礁にのりあげて船体を破損し、修理のために一ヶ月ほど木曜島にとどまったのである。 折しも木曜島では、明治十二三年に優秀な真珠貝の産地であることが発見されて、諸国から真珠貝

文字遣い

新字新仮名

初出

「小説新潮 第五巻第四号」1951(昭和26)年3月1日

底本

  • 坂口安吾全集 10
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年11月20日