めいじかいか あんごとりもの 05 そのよん ああむじょう
明治開化 安吾捕物 05 その四 ああ無情

冒頭文

今日一日で月が変ると、明日からは十二月。一年に十二回ある晦日という奴も気に入らないが、十二月という最後の月は月全体が性にあわない。昨日今日からメッキリ寒気が身にしみやがると、モーロー車夫の捨吉は毛布をひっかぶって上野広小路にちかい小路の角で辻待ちをしていた。上野駅には車夫集会所というのがあって、駅の車夫はそこに詰めるのが普通であるが、捨吉はモーローだから、辻で客を拾う。客によっては酒手をたんまり強

文字遣い

新字新仮名

初出

「小説新潮 第五巻第一号」1951(昭和26)年1月1日

底本

  • 坂口安吾全集 10
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年11月20日