めいじかいか あんごとりもの 03 そのに みっしつだいはんざい
明治開化 安吾捕物 03 その二 密室大犯罪

冒頭文

秋ばれの好天気。氷川の勝海舟邸の門をくぐったのは、うかない顔の泉山虎之介であった。よほど浮かない事情があるらしい。 玄関へたどりつくと、ここまで来たのが精いっぱい、というように、玄関脇に置いてある籐椅子にグッタリとつかまって、吐息をついた。こわれかけた籐椅子がグラつくのも気づかぬ態に腰かけて、額に指をあててジックリと考えこんだがミロク菩薩のような良い智慧はうかばないらしい。時々、思い余っ

文字遣い

新字新仮名

初出

「小説新潮 第四巻第一二号」1950(昭和25)年11月1日

底本

  • 坂口安吾全集 10
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年11月20日