めいじかいか あんごとりもの 02 そのいち ぶとうかいさつじんじけん
明治開化 安吾捕物 02 その一 舞踏会殺人事件

冒頭文

氷川の海舟屋敷の黒板塀をくぐったのは神楽坂の剣術使い泉山虎之介。この男、時はもう明治十八九年という開化の時世であるが、酔っぱらうと、泉山虎之介タチバナの時安と見得を切って女中のホッペタをなめたがる悪癖がある。 虎之介は幼少のころ、海舟について剣術を習ったことがある。そのころの勝海舟はいたって貧乏、まだ幕府には重用されず、剣術や蘭学などをメシの種にしていた。習うこと二三年、海舟が官について

文字遣い

新字新仮名

初出

「小説新潮 第四巻第一一号」1950(昭和25)年10月1日

底本

  • 坂口安吾全集 10
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年11月20日