わがじんせいかん 07 (しち) あくたがわしょうさつじんはんにん
我が人生観 07 (七)芥川賞殺人犯人

冒頭文

私は「警視総監の笑ひ」も「芥川賞の殺人」も面白く読めなかった。どちらも割り切れたようでいて、恐しい一刻者の作品、鼻ッ柱が強い強い。読みながら、駻馬(かんば)と鼻をつきあわしているようで、そういう面くらった面白さはあった。 姉が先夫のもとへ置き残してきた娘がセムシで、親というものを知らないミジメな暮しをしている。この処置をつけてもらおうと警視総監にたのむけれども、総監は先夫の名をきくと、そ

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮 第四七巻第一二号」1950(昭和25)年12月1日

底本

  • 坂口安吾全集 09
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年10月20日