“かしょう”ぶんか
“歌笑”文化

冒頭文

歌笑のような男、落語の伝統の型を破った人物は、私の短い半生でも、さきに金語楼、また同じころ、小三治(今、別の名であるが忘れた)などというのがいた。金語楼は兵隊落語、小三治は源平盛衰記など新しくよんだのである。私がはじめて彼らをきいたのは中学生のころで、彼らは私とほぼ同年配、いくらか年長の程度ではないかと思うが、今の歌笑にくらべると、これほどの時代的な関心はよばなかったようだ。彼らの話術を比較してみ

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論 第六五年第八号」1950(昭和25)年8月1日発行

底本

  • 坂口安吾全集 09
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年10月20日